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まんざらでもない生活日誌略して「まんせい」

本、漫画、映画、音楽が好きなサブカルになりきれない者の戯言です

『シン・ゴジラ』で邦画も捨てたもんじゃないと思った(ネタバレ注意)

ちょっと忙しくしてるうちに開設そうそう放置してしまいました、こんにちは。

ちなみに当方の「忙しい」はあくまでも当社比であり、
一般的感覚での「忙しい」とは異なっておりますのであしからず。


これ観ました。

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シン・ゴジラ

脚本・編集・総監督 庵野秀明
監督・特撮監督 樋口真輔

です。


自分はそもそもテレビシリーズから今まで20年ほどエヴァンゲリオンシリーズを
追っかけ続けてる、言ってしまえば「庵野信者」なのですが、

それでも実は『シン・ゴジラ』公開前にはその内容については
あまり期待してませんでした。


もちろん庵野監督の特撮への愛も、樋口監督の特撮の素晴らしい技術も
十分知ってましたし、

2012年に開催された『館長 庵野秀明特撮博物館』なんかも観に行ったりしてました。

特にその中で公開された『巨神兵東京に現わる』の出来栄えがとても感動的で、
館内で何度も何度も観ました。

巨神兵といえば、言わずと知れた宮崎駿監督『風の谷のナウシカ』に出てくる
人体を模したような巨大な兵器なわけですが、
ナウシカ巨神兵登場のシーンを庵野監督が担当していたのは有名な話。

自分もあのシーンは幼いころからナウシカを観るたびに感動するポイントだったので
エヴァンゲリオンが好きになってから巨神兵の担当が庵野監督だったことを知って
「ああ、だからエヴァンゲリオンも一目ですぐハマってしまったのだな」と
腑に落ちたものです。

そして、『巨神兵東京に現わる』を観て、ああ庵野監督にとって
エヴァンゲリオンとはこの巨神兵からインスパイアされたものだったのだなあと
またまた納得したのでした。

(『巨神兵東京に現わる』は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』のBD/DVDに
収録されてますので、ぜひご覧ください)


巨神兵~』の完成度を見れば『シン・ゴジラ』への期待も膨らみましたが、
同時にむくむくと湧き上がる不安要素もあり・・


庵野監督の実写映画はこれまで評判があまり芳しくなかった。

キューティーハニー』なんかはファンとしてはそれなりに楽しめましたが、
特にファンでもなんでもない、ヲタでもなんでもない方が観たときの感想は
やはり微妙な具合なのではと。

②樋口監督の去年のアレ

あの「大きな全裸の人たちが壁の中に入ってくるお話」の公開後に繰り広げられた悲劇は
全く制作現場に関係ない自分も思い出したくない。

樋口監督、きっとお辛かったであろうな・・と切ない気持ちになります。


③樋口監督の去年のアレの中のあの人

去年の全裸の人たちの映画の中で、石原さとみさんが演じた役が
どうしても受け入れられなくてですね。

あの役については賛否両論あったのでもちろん彼女の演技が
素晴らしいと思ってる方もいるでしょうが・・

いや、演技力がどうこうとかじゃなくてさあ~~、なんつーの?
テンションの?
違和感?
小劇団のスター女優の独壇場みたいな・・・・

まあ、そこらへんは俳優さんの問題じゃなくて演出した側の問題ですよね。


とかまあ、以上のような理由で、

庵野さんの実写映画不安・・』
『樋口さん、去年のアレが再びだったらどうしよう』
石原さとみ・・・また?』
とか思ってですね・・

「失敗」だったとしたら怖くて観れない!

身内が駄作だの言われたらたまらない・・
(注:身内でもなんでもなく単なるいちファン)

などと勝手にやきもきして観に行くことを躊躇してたのですが

公開後、各方面から沸き起こる絶賛の声に自分の不安は杞憂だったのかと思い、

さっそく公開3日目には劇場へGO。いやWent。

こういうところが自分ってチキンだなと思いますよね。


さて、そもそもゴジラシリーズにそれほど興味のなかった自分は

テレビでたまに昔のゴジラ映画をやるたびになんとなく観る程度。

2014年版のハリウッド製ゴジラ(『GODZILLAギャレス・エドワーズ監督)も
観に行きましたが

ゴジラがなかなか出てこないし、画面は暗くて現在何が起きているのか
把握しにくいし、恐ろしさもワクワク感もなく消化不良』

といったような感想でした。


な、わけで今回観に行った際も

『さてさて・・庵野君。ゴジラ好きでもなんでもない吾輩を
どう楽しませてくれるのかな?』

という謎の上から目線な心中で臨みました。


以下、ネタバレあり。


・・・・いやー、そしたらばね!震えたよね!


まず、情報量の多さ。

セリフの速さハンパねー!

んで、登場人物が、いちいち政府の中のどこの所属の誰かっていうのが

テロップで出てくるんだけど、

全然読めねーし、把握できねーの。


日ごろ、

『洋画って苦手なんだよねー。字幕が読みながら画面観るのって
難しくない?』

とか言ってるタイプの人を

「けっ!貴様の理解力が乏しいだけだろうが!

そんな奴はせいぜい吹替でビバリーヒルズコップでも観てな!」

と思ってた自分だったけど

(口が悪いのは育ちが悪いから。ごめんネ!)


シン・ゴジラ』のテロップ、全然読めなかったよ!

こういう気持ちだったんだよね、きっと!


あのテロップでは庵野監督の例のエヴァのタイトルの手法

(こういうやつ↓)

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を思い出しました。


なんだろう、意味もなく「カッケー!」って思うよね。


ここらへんはヤンキーの人が特攻服の背中に刺繍で

夜露死苦』って入れるのがハイパーかっこいいと思う心境と同じかな?

(たぶん違う)

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(*特攻服刺繍屋さんから引用)


最近のハリウッドゴジラはなかなか全身像をあらわさなくて

もったいぶるなあ!と思ってましたが、

今回は早めの登場。


でも一見、『ハァ?あんた誰?』な容貌。

両生類を思わせる、ビー玉のような無機質な丸い瞳・・・

そしてうねうねした身体はまるでヤモリだとかツチノコのよう。

見たことないけど。


わたし『うっ!かわいい!でもキモい!』


キモかわいいってああいうことを言うんですよね。

アンガールズの田中さんもブレイクしはじめのころは
キモかわいいって言われてたっけ。


『ほんとに・・・あんた、ゴジラなのかい?

昔っからそんな恰好だったかねえ。

ばあちゃん、しばらく会ってなかったから本当にあんたがゴジラなのか

分からないよ・・・でも、そうだって言うなら、

たぶんあんたがゴジラなんだろうねえ』

という田舎のばあちゃんの心境!

ばあちゃん、もうすぐオレオレ詐欺にひっかかりそうです!

ゴジラ、ばあちゃんにもうちょっと頻繁に連絡してあげてよ。



ゴジラ、出て来たー!!ワアア!!

とか はしゃいでたらまたカメラは官僚の会議にズームイン。


どこの部署が?

どのように?

何を使って?

ゴジラを倒すか、という議論が細かく細かく、積み上げられていきます。


パンフレットを読むと

実際に庵野監督の脚本をベースに、中川監督助手が

各省庁へ取材したりアンケートに答えてもらったりと、

現実にこのような災害が起きたらどういう組織が立ち上がるのか、

各省庁はどのような働きをするのか、

大臣はどこに待機するのか、劇中の会議の伝達方法は正しいのか、

そういったことをきちんと確認しているとのこと。


見たこともない巨大生物が街を破壊する___

そんな災害はほぼほぼ起こることはないでしょうが、

だからといってそのとき実際日本の政府はどういった対応になるのか?

そこをおろそかにすると単なるコメディになってしまう。


完全に空想上の存在であるゴジラ

リアリティを与えるためには、

ゴジラ以外のことすべてがリアルに感じられるように

追及する必要があるわけですよね。


民間人が多数残っている地域で爆撃を開始してもいいのか?

と葛藤する総理大臣、

そりゃ人間ですもの。

もちろん倫理的に、自分の良心的にそう思うのも当然、

でもたぶん、「自分がGoサインを出すことによって出る被害」に

責任を負いたくないのもあるだろう。


米国の軍隊に任せちゃった方がいいんじゃない?

その方が結局丸く収まるんじゃないの?的な

その場しのぎ、できるだけ責任を転嫁したい人たちも当然いて。


ひとつの決定が通るのにいろいろな省庁を経て、

該当部署の責任者のハンコがものを言う、

とかいうのもいかにも日本的。


このいかにもな人々が描かれる中で、ひとりだけ妙に異質な存在、

そう、それが石原さとみ演じるカヨコ・アン・パタースン、米国大統領特使。

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えーと、ハーフ?っていう設定。

最初はルー大柴的なそのしゃべりに

「お、おう・・・」

と多少引いていた自分でしたが、

なぜ彼女だけが浮いた存在なのか?と考えていて、


そういえばエヴァンゲリオンシリーズの中でも、

出てくる登場人物の女性たちはみんな自己主張が強くアクがある人ばかり。

ミサト、レイ、アスカ、リツコ、マリ・・・


エヴァの登場人物の中では、

男性キャラクターはシンジ、ゲンドウ、冬月、加持など

割と実際にもいそうな性格なのに対して、

女性キャラクターたちはみんなエキセントリック。


エヴァはアニメーションですが、描かれる舞台設定は

エヴァンゲリオンという空想上の存在以外は割りとリアル、

その中で実際にはちょっといなさそうな女性たちが活躍する、

そのことで物語は回っていきます。


この『シン・ゴジラ』の中でも庵野監督は

カヨコという異質な存在を使って

ゴジラ以外は地に足がつきすぎて無機質になってしまう物語に

彩りを添えているのだろうと思い、

なんとなく自分の中で腑に落ちました。


まあ、ただ、まだ一回しか観てないので

『結局カヨコって何しに来たんだっけ?』

的な疑問は残ってますが・・再度観たらカヨコの働きぶりが

分かるはずです!


ゴジラを倒すために<巨大不明生物特設災害対策本部>が設置され、

その事務局長に任命される、矢口蘭堂内閣官房副長官。

演じるのは長谷川博己


ご本人のキャラクターがもともと強すぎないからこそ、

巨人と戦ったり

中学教師なのに教え子を「神様」と崇めたり

不敵な言葉をささやいては「チャオ!」と言って風のように去る変態だったり

頼りない父親だったり、

深キョンに「コウ君がエッチしてくれないから!」と責められたり、

働かないことがステイタスの高等遊民だったり、


色んな役柄で重宝されている俳優のひとりです。


今回の真面目で任務に忠実なエリート官僚という役柄もよく似合う。


彼が中心となっていかにゴジラを撃退するかという作戦が

変人ばかり揃った<巨災対>で練られるわけですが、

まあ、結果その作戦の地味だったこと。


けれども、その地味さが逆に「イイネ!」なのです。


エヴァヤシマ作戦を思わせるこの作戦ですが、

むしろ日本中の電力を使ってエヴァ陽電子砲を撃たせるという

ヤシマ作戦のほうが派手。


でも現実に日本が巨大生物と戦うぞ!ということになったら

ほんとにこういうことになりそう・・・


日本の、実直で地味で、でもコツコツと勝ちを積み上げる、

ウサギと亀で言えば亀的なところがよく出た、

とても良い作戦だと思います。


メカ好きな人には

ワアー!戦車だけでなく

新幹線が!山手線が!

クレーン車たちよ・・・偉いぞ!


という萌えが楽しめるはず。

電車かわいいよ電車、車かわいいよ車、

みたいな気持ちになってきます。みんな偉いね。がんばったね。

とハナマルあげたい気分です。


そんなこんなで、『シン・ゴジラ』すごく楽しんでしまいました。

去年は『マッドマックス』『キングスマン』あたりにハマってしまい、

何度も観に行ってしまった自分ですが

今年はゴジラがそれになりそう。

邦画は一年に数本も観ないので自分でも意外です。


最近はすっかり邦画が興行収入ランキングでも上位に入るようになってきていますが、

かといって内容はそれほど充実していないように思います。


ヒットを狙うためにはあまり冒険できないからだと思いますが、

どうしても漫画原作、小説原作の作品が多く

(まあ、海外の作品も今はアメコミもそうだし、小説原作も多いと思いますが)

そうなると原作と比べてどうだとか、

そういったことばかりに気を取られてしまうし

SFやファンタジーものは邦画の映像クオリティだと

どうしても安っぽく思えてしまうものが多くて楽しめず。


今回のゴジラの映像が際立ってリアルに造られているとは思いませんが、

なにせもともとゴジラの醍醐味は特撮というところですから。

別にリアルでなくたってよいと感じてしまう。


地味だし、身近なものばかり使っちゃって、ぜんぜん高級な感じしないですけど、

それが逆にとても良い効果を生んでいる映画だなあと思いました。


これは自分が庵野監督の作品がもともと好きだから、

というだけではないはず。


ちなみに、このとき夫と劇場に行ったのですが

彼は邦画にわたし以上に興味がなく、DVDで十分だろう、

むしろDVDでもあんまり観たくないけど、というくらい

海外作品しか観ない人です。


観終わった後も無口だったので『アレ?やっぱつまんなかったのかな?』

と思っていたら、

『これ続編できるだろうな。すごく面白かった。

キングスマンより面白いかも』

とか言い出したのでびっくりしました。


まあ、自分はキングスマンは去年のナンバー1か2を争うくらい

個人的に大好きな映画なので

『それはちょっと言い過ぎなのでは・・・・』

と思いましたが、

エヴァにも邦画にも興味のない人がそう言うのなら、

きっと誰が観てもこの映画は面白い作品なんだろうなあと感じたのです。


かといって この『シン・ゴジラ』の真似をした手法の映画が現れたところで

きっとそれは素晴らしいものにはならないでしょう。


この映画のコピーには

『現実(ニッポン)対 虚構(ゴジラ)』

とありました。

上手いなあ。


この映画はゴジラだけでなく様々な日本のしがらみと戦っているような

そんな作品でした。


一見、小難しそうな内容に思えるし、

きっとセリフはちゃんとすぐには頭に入ってこないし、

漢字だらけの画面だとか

地味な会議室やコピー機やら資料やらたくさん出てきますが、

ぜひ、お子さんにも見せてあげてほしい。

きちんと戦っている大人はどんな職業でもかっこいいんだよと

教えてあげてほしいものです。